貫之の心・私の元永本古今和歌集

一味違った古今集の解読を試みたものです。
抒情詩として読まれてきましたが、「掛詞」をキーワードに解読してみると、政治的敗者の叙事詩が現れてきました。その一部、かな序だけでも鑑賞していただけたらと思います。

(24)複数文字の脱字-3 (436)の場合

巻第10 物名(436)には4字の脱字があるとされ、定家は、「あたなる」を補って入れている。


(436)さうひ                   つらゆき
われはけさ うひにそみつる 花の色を ものと 云へかりけり


「私は今朝初めて見たが、世間で珍重しているこの花の色をあだっぽいものであるというべきであるよ。」(久曽神訳)


四句の下線部「毛のと」の私の臨書した部分を説明したい。

  

「毛」の3画までは、「三・み」、3画目から「の」に至るまでの連綿で、「支・き」と読める。その最終画を、「留・る」と強引に読んで、本来の「毛の」を読み、「みきるものと」と読んでいるとみた。


3句は、余字だから、「を」を4句に移動すれば、「を(緒)みきるものと」と定型になる。つまり、
「われはけさ うひにそみつる 花の色 緒見切るものと 云へかりけり」
を意図している。


われは=割れ(自下二未然形・秘密がばれる)・ば(仮定の接続助詞)。この仮定は、4 
    句に飛んで、つながる。
けさうひに=懸想び(自上二連用形・気があるように装う)・に。
そみつる=祚(天皇の位)・見・つる(完了の助動詞「つ」連体形)。
花の色=端名(名門の家)の・色(顔色、様子)。
をみきるものと=緒(命)・見切る(最後まで様子を見る)・ものと。


「物ほしそうに、皇位を見ていた権門、藤原氏の顔色よ、毒殺の秘密がばれたとしても、良房の死を最期まで見届けるというべきであった。」


惟喬親王が良房を毒殺したことは、(233)に詠まれている。彼は、周りの人の援助を得て周到に毒殺の計画をしたのであろう、良房の死の三か月前に出家している。


万葉仮名、変体仮名に、平かなを能書は、見ている。決して、間違って書き抜かしている訳ではない。漢字から、万葉仮名を作ったように、変体仮名から平かなを生み出している過程がみてとれる。

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