貫之の心・私の元永本古今和歌集

一味違った古今集の解読を試みたものです。
抒情詩として読まれてきましたが、「掛詞」をキーワードに解読してみると、政治的敗者の叙事詩が現れてきました。その一部、かな序だけでも鑑賞していただけたらと思います。

(25)陽成天皇は、業平の子。

清和天皇の長男とされる貞明親王は、高子と業平との不倫の子であると暴露している歌がある。貫之が、「かな序」で絶賛した文屋康秀の作、(445)。良房が、源信を毒殺したとも暴露している(249)。


(445)二条后のまたみやすところと申ける時 かめにけつり花をさせるを よませたまひけれは                                やすひて
はなのきに あらさらめとも さきにけり ふりにしこのみ なるよしもかな


「生花の木ではありませんが、花が咲きました。時を経て木の実が生ってほしいものよ。」


はなのき=花の木。(音読みで)禍(災い)の姫(音読み)。
さきにけり=咲きにけり。幸・逃げ(自下二未然形)・り(完了の助動詞終止形)。
ふりにしこのみ=古りにし木の実。不倫・に(「にあり」の「なり」連用形)し(回想の
     助動詞「き」連体形)子の身。
なるよしもかな=生る(自四連体形・実ができる)、成る(自四・うまくゆく)由(縁
     故)もがな。


二条后(高子)が、まだ女御といわれていた時、甕に削り花が挿してあったのをお詠みになるよう言われたので、(詠んだ歌)康秀。
「災いの姫ではないのに、幸福は逃げてしまいました、不倫でできた子、貞明親王の運がうまくいく(即位の)縁故があってほしいものよ。」


これは、高子と業平の不倫を詠った歌で、巻第11恋歌(1)に入り、この手の歌が次々に詠われる。
どうも、業平には平城系への皇位奪還の願いがあったようで、高子の皇子二人は、業平の子である(516)。8歳も年上の高子は、清和にとっては、どうにも手ごわい存在であったらしく、まったく、彼はコケにされている。清和は良房の操り人形であり、高子の不倫も認めざるを得なく、女に血迷ったことで、世の女たちに人気がなかったのである。良房は、高子を政略結婚させたのだろうが、高子にとって、清和は成人ではなく、恋の相手を業平に定めていたとみる。家を捨て、恋に奔放に生きた女のようにみえる(519)。


「はなのき」に関連するように、「さら(夏椿)」「めと(萩)」の物名の歌でもある。

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