貫之の心・私の元永本古今和歌集

一味違った古今集の解読を試みたものです。
抒情詩として読まれてきましたが、「掛詞」をキーワードに解読してみると、政治的敗者の叙事詩が現れてきました。その一部、かな序だけでも鑑賞していただけたらと思います。

(26)陽成天皇は、名歌人❣

陽成天皇は、業平の子である。さすがに、歌もうまい!
業平の子の証明になるほどうまいと、思ってしまった歌を紹介します。


(1120)おちたきつ かはせになひく うたかたの おもはさらめや こひしきことを
「激しく流れる川瀬に揺れ動く泡沫は、恋慕っていることに思いをはせないのでしょうか。」


おちたきつ=伯父(基経のこと)・たぎつ(自四連体形・激しく流れる、心が騒ぐ)
かはせになひく=川(血脈の暗喩)・兄(親しい男への呼称)に・名引く(名声を浴び 
     る)
うたかたの=歌方(歌人)の
おもはさらめや=母(高子)・バサラ(常識を破る知力)・女・や(疑問の助詞)
こひしきことを=子・秘しき(「秘し」を形シクの造語とみた)ことを、一句の「たきつ」の補語に続く。


「伯父基経は、(高子の不倫の)子を隠したことに心が騒いだ。(業平は)同族の男達に名声を浴びる歌人であり、母は、バサラの女なのだろうか。」


歌のネクサスから言えば、作者は、陽成。
彼は、自分の出自を理解しており、母高子を「バサラ女」と、高く評価しているとみる。
当時は、高子の常識破りの放蕩な行為とも受け取れるが、だいたいがデカダン、常識そのものが男本意のエロ、時代を切り開く女に見えたのかも。


もう一首、百人一首にある有名な歌。
つくはねの みねよりおつる みなの川 こひそつもりて ふちとなりける
「筑波山の峰から、落ちる男女川よ、その川のように、私の恋も積もって、淵となって深いものになってしまった。」
恋多き男の歌として親しまれている。


つくはねの=継ぐ(他四連体形・受け継ぐ)・はね(他下二連用形・首を切る)の
みねよりおつる=御根(両親のこと)より・怖づる(自上二連体形・恐れる)
みなの川=皆(すべて)の・川(堀河大臣、基経の暗喩)
こひそつもりて=媚びぞ積もりて
ふちとなりける=藤と・なりける


「私の子の皇位継承もできなく、親より怖いすべてである基経よ、媚び続けて藤原氏の天下となってしまったことよ。」


宮中での撲殺事件を機に、陽成は、基経に天皇廃位される。誰よりも長生きして、藤原氏の繁栄を目撃する感慨であろう。

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