貫之の心・私の元永本古今和歌集

一味違った古今集の解読を試みたものです。
抒情詩として読まれてきましたが、「掛詞」をキーワードに解読してみると、政治的敗者の叙事詩が現れてきました。その一部、かな序だけでも鑑賞していただけたらと思います。

(39)維斗のつもりの「伊都国」

古今集(1054)は、糸と名ありける男によそへていひける
とはじまる。
糸=維斗(ゐと)、北斗七星のことで、天子の暗喩。
そう理解して、はじめて、この歌で、(陽成の父としての立場が「祚・天皇の位」に当たるのだが)業平は、即位の野望は持っていないと詠っているとわかる。


しかし、糸は「いと」であり、「ゐと」とは区別される。
そこで、思い出したのが、魏志倭人伝の「伊都国」。そこには、周辺を支配する女王「卑弥呼」が住んでいる。この国の名前は、中華思想の下、例えば「井都國」としなかったとみられる。後漢書では、「漢委奴国王印」のように、「委奴・ゐど」と卑語の命名をしている。しかし、「卑弥呼」としては、彼女は「維斗」であり、その国は、「維斗國」であるべきなのだ。中国は冊封する立場だから、書面には「伊都国」となったのであろうと推測する。


そうした歴史を踏まえて、「糸」が「維斗」に、通常は,なされない読みなしが使われているとみた。ここは、中国文化圏の片隅なのだった。

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