貫之の心・私の元永本古今和歌集

一味違った古今集の解読を試みたものです。
抒情詩として読まれてきましたが、「掛詞」をキーワードに解読してみると、政治的敗者の叙事詩が現れてきました。その一部、かな序だけでも鑑賞していただけたらと思います。

(43)枕詞「あしひきの」は百済出身の意

枕詞「あしひきの」は、山、峰に係る。最も多く使われている枕詞であり、この「あし」は、足。名前にも多く現れる。例えば、斉明天皇の当時の諡号は、天豊財重日足姫天皇である。
「足」は、コリアンで「タリ」と発音され、二本脚のことを指している。橋という意味もあり、二股に別れた人の足のような形である。藤原鎌足の「たり」である(藤村由加「枕詞千年の謎」)。また、日本書紀では、孝安天皇を日本足彦国押人(やまとたらしひこくにおしひと)天皇と訓むように、人名では「タラシ」が多くみられる。


天皇は、特にその名に意味が込められているとみなければならない。極東の列島での覇権をめぐる争いの勝者の歴史書が日本書紀とみれば、その出自もそこに織り込まれているとみられる。


二股にわかれたのは、扶余の高句麗と百済である。足の「タリ」「タラシ」は、この扶余から出た百済の意味ではないか。つまり、新羅に対して、「あしひきの」は、百済系の出自を言い表した枕詞であるとみる。


例に、多く和歌に詠まれている枕詞を取り上げてみる。
万葉集(2813)あしひきの 山鳥の尾の しだり尾の 長長し夜を ひとりかも寝む
作者は、百人一首では、柿本人麻呂とするが、万葉集では、作者は無記名。従来、三句までは、「長々し夜を」を出す序詞とされ、その意味は、ほぼないとされる。


あしひきの=百済の血をひく、百済系の。
山鳥の尾の=山(天皇の暗喩)鳥(朝・百済を暗喩)の・を(緒=ものごとが長く続くこ
     と)の。
しだり尾の=したり(得意がっている様子)斧(「斧の柄朽つ」のように、長く有用であ
     ることの暗喩)。
長々し夜を=なかなか(感動詞・その通り、いかにも)士(立派な人、天武)世を。
     「長々し」はシク形容詞終止形で、ここでは、連体形であるなら、「長々し
     き」でなければならない。)
ひとりかも寝む=日(天子)取り・か(疑問の係助詞)妹(鸕野讃良)睨(ね)む(他下二
                   終止形・にらむ)。


「百済系の天皇が続いて、得意の百済長期政権だった。いかにも、(新羅系)天武の世を奪うのか、鸕野讃良は(政権奪還を)にらんでいる。」


新羅系の天武の政権を百済系天智が奪おうと、四人の天智の娘が大海皇子の妻に送り込まれたと詠った歌とみた。そのうち、鸕野讃良が、政権奪還を企むことになる。勿論これは、鎌足の画策であろう。


作者を人麻呂とすれば、どうも、彼は天武の息子であったのではないかと想像する。古今集の編者、紀友則は、光孝天皇の子で、宇多の兄弟だし、貫之、壬生忠峯、凡河内躬恒は、宇多の子であると詠われている歌があるからだ。身分の低い人麻呂が、これだけの多くの政治歌を詠っているということは、貫之らと同じような立場にあったことを想像したくなるのだ。万葉集の歌の解読が進めば、その手がかりの歌が出て来るのではないかと思っているが。

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