(81)宇多の愛情深さにホロリ…
凡河内躬恒は、宇多の子(305)だが、冷たくも宇多は認知しなかった。
しかし、(1067)の詞書には、その宇多が内々に認知したことが、読み取れる。
(1067)法皇西河におはしましけるに 猿山かゐにさけふといふ題を
「法皇が西河にいらっしゃる時、猿が山峡に叫ぶという題を(与え、読ませなさった)。
このように表記されている文を、
①万葉仮名のように、同音であれば他の漢字に変えてよい
②文節をどこで区切るかは、読み手次第
というルールのもとで、読み替えてみよう。
(1067)法皇財貨におはし、まし(おまえ)消るに、会座が為に、酒、封と異譜代を
「宇多法皇は、財産がおありになり、おまえ(躬恒の養父)が亡くなった時、葬儀のために、酒、封戸(食封)と異なる、つまり、本当の(血筋の)系図を(躬恒に与えた)。」
養父が亡くなり、葬儀の援助をし、躬恒に収入の確保をしてやり、その上、世上とは異なる本当の、宇多が父であるということを示した系図をくれたというのだ。
なんという親心、ホロリとしてしまった。宇多にとっては、罪滅ぼしということだろうが。