貫之の心・私の元永本古今和歌集

一味違った古今集の解読を試みたものです。
抒情詩として読まれてきましたが、「掛詞」をキーワードに解読してみると、政治的敗者の叙事詩が現れてきました。その一部、かな序だけでも鑑賞していただけたらと思います。

(6)関白基経、光孝天皇を毒殺!

前回、表題に挙げたことを言及したので、そのことを説明しよう。

その歌は、貫之が古今集を奉った時に、添えた長歌の中に詠われている。四季に始まる部立てに従った歌にしてあるが、実は、陽成天皇と基経との確執から、基経による光孝天皇の密殺(死)、醍醐天皇の古今集勅命までの歴史を伝えている。ここは、「賀」と「離別」の歌に当たる。
(1002)古歌たてまつれる時の長歌 貫之
…きみをのみ ちよにといはむ よのひとの おもひするかの
 ふしのねの もゆるおもひも あかすして わかるゝなみた
 ふちころも おれるたてぬき…


「…あなた様だけは、千代に長生きしてほしいという世の人々の想いも駿河の富士山の燃えるような想いも満たされず、別れる涙、喪服の悲しみを縦糸と横糸にして…」

というように一般的には、解釈されている。これでは、作者は、いったい何をいいたいのか不明である。

きみ=光孝天皇のこと。
いはむ=言はむ、満む(たくさん集まる)。
よのひと=世の人、夜の人(女御など後宮の女たち)。
おもひするかの=想ひ・駿河(「為す」を掛ける)の、擦る(手をこすって祈り願う)彼(あちら)の。
ふしのね=富士の嶺(不死の音=人々の光孝天皇が生きていて欲しいという声)、藤(藤原氏)の根(基=基経、隠れた奥深い部分)、附子の根(猛毒のトリカブトの根)。
もゆるおもひ=燃ゆる想ひ、萌ゆる(芽生える)思ひ(執念)。
あかす=飽かず、明か(明く・自四未然形・明らかになる)ず。
ふちころも=藤衣(喪服)。
おれるたてぬき=織れる縦緯、折れる楯(守り)貫き。


「…光孝天皇だけは、長生きしてほしかったとたくさんの人が集まって来る。関係した女たちは、手をこすり祈り願うが、彼は、あちらにあり(死んでしまい)、藤原氏の根である基経に芽生えた思い(謀略ー光孝天皇をトリカブトの根で毒殺したこと)も明らかにされず、死別した悲しい涙よ、彼に負けたが、その息子の宇多に皇位は継承され…」

光孝天皇には、多数の女性関係があり、その子等40人以上いて、即位して3年で没している(887年)が、基経に毒殺されたと貫之は、暴露しているのである。

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