貫之の心・私の元永本古今和歌集

一味違った古今集の解読を試みたものです。
抒情詩として読まれてきましたが、「掛詞」をキーワードに解読してみると、政治的敗者の叙事詩が現れてきました。その一部、かな序だけでも鑑賞していただけたらと思います。

(29)文徳の母順子は毒殺された

(616)おきもせす ねもせてよるを あかしては はるのものとて なかめくらしつ


おき=起き、息。
ね=寝、音。
よる=夜、寄る。
あかしては=明かしては。明し手(晴らした手段)は。吾が仕手(やり手)は。
春のもの=情事のこと、→菱藻(砒霜)。(音読みで)順(順子)の(音読みで)仏(ほと
    け=自分が大切に思う人)。
なかめくらしつ=眺め暮らしつ、中(胸中)・巡らし(他四連用形・触れ知らせる)つ。
    (な)が・めくら(盲人)実(じつ、副詞・まことに)。


「息を凝らして、音もたてず、(仁明天皇の妃順子を毒殺するために)近寄ったのだが、晴らした手段は、砒霜で、胸中(順子を亡き者にしたうれしさ)を言いふらしてしまった。」


文徳の母順子は、良房の妹で、仁明天皇の輩行から直系継承をなした要の人物であり、桓武直系の業平にとっては(他にも理由はあるが)許しがたかったのである。順子を砒霜(亜ヒ酸)で毒殺したことを詠んだ歌とみえる。


(299)で、871年順子が毒殺され、彼女の兄良房も872年、相次いで毒殺されたことが詠われており、順子は砒霜で毒殺されたことが(503)に詠われている。


「春のもの」と、ぼかして表現しているが、順子の毒殺に関して詠んでいるとみて、「砒霜」から、「菱藻」と結び付けた訳だが、菱は、当時有用植物であり、その繁茂するようすを「春」の景物として文化的に共有されていたと判断した。


2022.5.29追加
別の解釈に至ったので、その部分を改定することなく、文字の色を変えて追加してみます。
「息を凝らして、音もたてず、(淳和は)順子に近寄ったが、わがやり手淳和は、順子の大切な人だとしても、おまえは、‘めくら’よ。本当に。」


順子は、淳和と不倫をして、道康(文徳)を生んでいる(574)。だから、淳和は、同じように不倫をした業平の先輩。しかし、順子は、美人ではないから、淳和を「めくら」と言って冷やかしていると理解してみた。高子は美人だったのだ。

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